2026年5月13日水曜日

401.囲繞地通行権

 


「囲繞地通行権」のはなし

本日は、久しぶりに「囲繞地(いにょうち)」に関わる案件に触れる機会があったため、以前のレポートをリライトしてお届けします。

不動産実務において、最も感情的になりやすく、かつ法的な解釈が問われるのが、この「通る・通らせない」の論理です。


1. 突然届いた「内容証明郵便」

ある日、弊社が取得したばかりの土地に対して、一本の内容証明郵便が届きました。差出人は、隣接する「無道路地(袋地)」の所有者。その内容は、「囲繞地通行権」を主張し、車両が通行できる範囲を開放せよ、という強い要求でした。

用語解説

  • 無道路地(袋地): 公道に接していない土地。

  • 囲繞地(いにょうち): 袋地を囲んでいる周りの土地。

2. 囲繞地通行権の「原則」と「限界」

民法上、袋地の所有者は公道に出るために囲繞地を通行する権利が認められています。しかし、これは「何でもあり」の権利ではありません。

  • 場所の制限: 囲繞地にとって最も損害が少ない場所・方法を選ばなければなりません(最小限の範囲)。

  • 車両通行の可否: 徒歩での通行は認められても、当然に「車両(車や重機)」の通行まで認められるとは限りません。

  • 償金の支払い: 原則として、通行者は囲繞地所有者に対して通行料(償金)を支払う義務があります。

3. 「現場の真実」と「法的な解釈」の乖離

今回のケースを精査したところ、いくつかの事実が判明しました。

  1. 過去の経緯: 元々は別の畦道(あぜみち)を通っていたが、弊社地が舗装されたことで、勝手に軽トラで乗り入れるようになった。

  2. 代替ルート: 反対側に幅員1.2mの里道があり、車両は無理でも歩行での公道出入りは可能だった。

つまり、厳密な法解釈に照らせば、弊社の土地が「唯一絶対の囲繞地」であるか、あるいは「車両通行まで認められるべきか」には大きな疑問符がつく状態でした。

4. 「トラブル上等」ではなく「出口」を見据えた決着

いきなり内容証明を送りつけてくるような相手に対し、こちらも法的に争う姿勢を見せることは容易です。しかし、不動産実務において重要なのは「勝ち負け」よりも「資産価値の最大化」です。

弊社は、将来の分譲計画に支障が出ない範囲で、農機具が通れる程度の通路を確保する譲歩案を提示しました。

【結末】 最終的には、この隣地の方とも足並みを揃え、一帯を分譲マンション用地として売却することに成功しました。あの時、感情的に対立して裁判沙汰になっていれば、このスムーズな売却(利益確定)はあり得なかったでしょう。


まとめ

囲繞地通行権の問題は、一度こじれると何世代にもわたる遺恨を残します。

「通らせろ」という通る側の論理も、「勝手に通るな」という通られる側の論理も、どちらも一理あります。しかし、我々不動産専門職が介在する価値は、法的な白黒をつけることだけではなく、 双方が「得をする出口」をデザインすることにあると再認識した事例でした。

隣地との関係性に不安がある土地の査定や売却も、ぜひお気軽にご相談ください。